長距離列車での移動中や外出先、残業、深夜の勉強など、中国で小腹がすいた時の「相棒」となるのがインスタントラーメン。最近は原材料費の高騰に伴い値上げが相次いでいるが、若者層を中心に「インスタントラーメンはもう食べないから関係ない」という声も出ている。
インスタントラーメンの「創始者」として知られる日本の最大手・日清食品(Nissin)は3月1日から、中国の工場で製造するインスタントラーメンの出荷価格を引き上げると発表。「辛ラーメン」をはじめとした韓国の大手メーカーも昨年8月から値上げに踏み切り、昨年10月段階の韓国メーカーの価格は前年同月比で11%上昇した。
山西省太原市のスーパーで、棚に並ぶインスタントラーメンを見る買い物客(2020年2月21日撮影、資料写真)。((c)CNS/張雲)
中国国内大手の康師傅(Tingyi)も春節(旧正月、Lunar New Year)明けに価格を10%以上引き上げ、もう一つの大手・統一企業(Uni-President Enterprises)の商品も約12%上昇した。
一連の値上げについて、ネットユーザーの反応は冷ややかだ。「そもそも量が前から少なくなっていた」という「隠れ値上げ」の指摘や、健康志向が広まっている若者からは「脂っこくて、もう食べなくなった」という意見も。「今は高速鉄道が全土に普及して目的地にすぐ到着するので、以前のように長距離列車でインスタントラーメンを食べる必要はなくなった」とライフスタイルの変化を挙げる人もいる。
消費者の「インスタントラーメン離れ」は、急速に発展しているテイクアウト業界と多様化したファストフード製品の影響も大きい。代表的なのが、タニシでスープのダシを取ったビーフン「螺蛳粉(タニシ麺)」。「クセが強いがやみつきになる」と2021年に中国で爆発的人気となり、通販や飲食店の売り上げは1年間で500億元(約9264億円)を超えた。
2021年の中間業績報告によると、康師傅のインスタントラーメンの収益は前年比で14.6%減少。統一企業の食品事業の収益は前年比で5億元(約92億6440万円)近く減少した。両社はその理由を「コロナ禍が緩和し、消費者の需要が日常回帰した」としているが、実際にはインスタントラーメン業界は2013年から下降傾向にある。
こうした状況を打開しようと康師傅と統一企業は「マルチプライス戦略」を展開。高価格帯の商品開発や種類の多様化を進め、さらに人気コンテンツとのコラボで若い消費者を引き付けようとしている。食品業界のアナリスト、朱丹蓬(Zhu Danpeng)氏は「新世代の若者は絶えず業界のアップグレードを求めている」と指摘。若者層の消費意欲に響くかどうかが成功の鍵とみている。(c)CNS/JCM/AFPBB News
※この記事は、CNS(China News Service)のニュースをJCMが日本語訳したものです。CNSは1952年に設立された中華人民共和国の国営通信社です。