中国語でアジサイを「紫陽花」と書かない理由とは
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中国中南部ではアジサイが見ごろを迎えている。4月2日まで中国南部の広州市(Guangzhou)で開かれていた第30回広州園芸博覧会でもアジサイはメインフラワーとして展示されていた。

雲南省昆明市の公園に咲いているアジサイ(2021年5月17日撮影、資料写真)。((c)CNS/李嘉嫺)

広州園芸博覧会には、香港やマカオ、深セン市(Shenzhen)などの粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア、Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)の各都市から美しい花々が集まった。

メインフラワーのアジサイは中国でも日本と同じようにありふれた花だが、古くから品種改良されて品種も多く、土壌によって色合いが変化するなど多彩な花として知られる。

広い中国ではアジサイの開花時期も桜前線と同じように南から北上し、市場に出回るため、フラワーショップに長く置かれる花でもある。

このアジサイ、日本では「紫陽花」と書くが、中国語では「繍球花(しゅうきゅうか)」と呼ばれる。刺繍(ししゅう)した手まりの意味だ。

「紫陽花」の由来は、唐代の詩人である白居易(Bai Juyi)の詩。この詩を日本に紹介した平安時代中期の歌人、学者である源順(みなもとのしたごう)が、白居易の詩の「紫陽花」をアジサイだと思い込み、アジサイに「紫陽花」という漢字を当てたことから日本では間違ったまま定着したといわれる。

白居易は「誰も名を知らない花。君に紫陽花という名を差し上げよう(雖在人間人不識/与君名作紫陽花)」と詠んだのだが、果たしてその花が何だったかは判明していない。

伝言ゲームのように中国から日本に伝わってくる間に、異なる意味になってしまった漢字はまだある。「鮎」は日本ではアユのことだが、中国でこう書くとナマズを意味する。ナマズは1か所にとどまって場所を占拠するから魚偏に占で「鮎」と書く。それが日本に伝わってくる間にアユを指すように変わったというのが定説だ。ちなみに中国でアユは「香魚」と書く。

アジサイやアユを例に出すまでもなく伝言ゲームは難しいものだ。間違いとまでは言えなくても、本来のニュアンスと大きく異なる伝わり方をしている言葉は多い。

冒頭の広州園芸博覧会でも、香港やマカオなどの「粤港澳大湾区」から美しい花々が集まったと聞くと、「大湾区」という漢字から自然豊かな海辺の湾を想像してしまいそうだが、実際の意味はその漢字のニュアンスとは大きく異なる。

粤港澳大湾区とは、広東省の九つの都市(広州市、深セン市、東莞市<Dongguan>、恵州市<Huizhou>、仏山市<Foshan>、江門市<Jiangmen>、中山市<Zhongshan>、珠海市<Zhuahai>、肇慶市<Zhaoqing>)に香港、マカオを加えた11の都市、域内人口約7000万人の巨大経済圏構想だ。日本メディアは漢字でそのまま「大湾区」と書いている。英語圏では「Greater Bay Area」と翻訳され、米国のサンフランシスコやニューヨークのベイエリアと共に世界3大ベイエリアと呼ばれることもある。

中国政府による2019年の構想発表以降、大湾区では、巨大な橋などのインフラ投資が進み、関税が引き下げられて、2022年の域内経済規模は13兆元(約250兆円)に達した。これは日本全体のGDP(国内総生産)の半分以上にもなる。

今後も経済成長が見込まれる中国の巨大経済圏「粤港澳大湾区」。地理的に近い日本への影響の大きさに比べれば、そのスケールや将来性が日本語でなかなかイメージできていないのは、名前の漢字が難しいからなのか。それとも「紫陽花」のように時代が下れば、ちゃんと大湾区の実像がイメージできるようになるのか。紫陽花の名付け親である白居易に聞いてみたい。(c)東方新報/AFPBB News

※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。

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