29歳のフランス人青年ジュール・テヴノン(Jules Thevenon)は「上海臨港新片区経済発展有限公司」の国際事務公関(国際渉外業務)経理(マネージャー)だ。中国(上海)自由貿易試験区臨港新片区(以下、臨港新片区と称す)で勤務して2年経ったが、今でも臨港新片区の日進月歩の発展に驚かされる。
次々に入って来る新しい会社、続々と建ち上がる工場や建屋、街角にはいつの間にか開業したレストランやカフェ・・・・。ジュールさんは「ここは若い都市であり、若者のための都市でもある」という。
臨港新片区にある本屋で本を読んでいるジュールさん 撮影=任新月
臨港地区の歴史は浅く、ここで働く人よりも歳が若い時もある。しかし臨港の前途はとても遠大で、全世界の青年がここに来て才能の花を咲かせるのに十分な場所だ。
臨港新片区は「自貿区の空間を簡単に拡大して今の政策を単純に適用した地区では無く、自貿区政策をもっと深く掘り下げ、もっと領域を広げ、もっと大きな力で全方位のハイレベルな開放を推進する地区」なのだ。この話は、臨港新片区が誕生した当初からすでに外部に知れ渡っていた。
ここで働くジュールさんは「ほとんど毎日新しい変化があるので、全世界の企業向けに臨港を紹介するためには、いつも自分の知識を更新しておく必要がある」という。
そしてこの変化は全て一つの目標に向かっている。それは「更なる開放、更なる利便化」という方向だ。
臨港新片区は4年の発展を経て、「投資の自由」「貿易の自由」「資金の自由」「輸送の自由」「人と職業の自由」及び「データ伝達の迅速化・利便化」を核心とする『五つの自由、一つの便利』制度型の開放体系の基本建設を達成した。
最新データによると、4年の間に当区で制定された典型的制度革新の事案は102件に達し、そのうち全国初となる事案は48件にも上る。
国際再保険業務プラットフォームの正式立ち上げ、国際天然ガストレードセンターで初めてのクロスボーダー人民元決済によるLNG取引、国際航行船舶への保税LNGの給油船からのオフショア給油・・・・、どのアイテムも「最初のイノベーション」と「率先」というべきものが臨港新片区で実現、開花した。
一人の外国人としてジュールさんは、臨港新片区の「使命」を素朴に理解している。「臨港の意義は開放であり、さらにまた開放である。中国と世界をさらに緊密に結びつけることだ」、ジュールさんはこう理解している。
当区では「開放がもたらす経済活力」を直感的に感じることが出来る。
2018年、中国は新エネルギー車の外資投資比率の制限を撤廃した。米国EVメーカーのテスラが当区に投資を実行し、中国で初めての外国独資の自動車メーカーとなった。2019年1月、テスラの研究開発から製造販売までをカバーする超大型工場が完成した。同年12月には最初の完成車が出荷された。「同年起工、同年竣工、同年操業開始、同年出荷」という大記録が達成されたのだ。
今年9月6日、テスラ超大型工場はとうとう200万台目の車を出荷した。この工場は操業開始から33か月で最初の100万台生産を達成し、そこから僅か13か月で2回目の100万台を達成した。
臨港新片区 提供写真
テスラ社の陶琳(Tao Lin)グローバル副総裁は、テスラの上海自貿区での毎日の発展は、まるで長距離を全力疾走しているようなものだという。「スタート時にスパートするのは可能だが、毎日そのスピードを維持するのはとても難しい。全力疾走で長距離を走ること、これが企業の発展と地区の発展への最大のチャレンジであり試練でもある」、陶氏はこのように語る。
「千帆競速、百舸争流」(千の帆が速さを競い、百の舟が流れを争う)」、多くの人や物が競い合って前進する、勇気が溢れ活気がある様子を表している。臨港新片区も同じように、多くの重点業界が「動き出す時は全力疾走」の勢いで急速に発展している。
臨港新片区設立以来、上海市は4年連続で市レベルの支援政策を公布し、全市をあげて同区の発展をサポートしている。
現在同区は、科学技術のイノベーションを内生的な原動力とし、先進製造業を重要な支柱とし、現代サービス業を特色ある強みとした産業発展の枠組みを、加速度的に構築している。
先端産業の分野では、「6+2」先端産業体系(新材料、新エネルギー等6つの百億元規模の優秀産業並びにデジタル経済と中間性試験の2大新興産業)の構築に力を入れ、スマート新エネルギー車産業の年間生産額は2,300億元(約4兆7200億円)を突破した。
EV用バッテリー企業「寧徳時代(CATL)」、スマート操作とAI技術の「中科創達(Thunder Soft)」等の重点企業が相次いで同区に来ている。集積回路の「長電科技(JCET)」など12社の重点産業プロジェクトの建設が始まっている。
行政機関のデータによると、この4年間、臨港新片区の生産総額の年平均の伸び率は21.2%、統計基準を満たす企業の工業総生産額の伸びは37.8%となっている。
上海市常務委員会委員・臨港新片区党工作委員会書記・管理委員会主任の陳金山(Chen Jinshan)氏は「臨港新片区は上海の経済発展の『成長極』であり『エンジン』の役割だ」と述べる。
上海市発展と改革委員会の阮青(Yuan Qing)副主任は「新しい出発点に立ち、上海市は、臨港新片区の持続的な深化と特殊経済効能開拓の継続と高品質な発展の最前列を歩むことを推し進める」との方針を語っている。
「臨港新片区の『遠大な理想』は一つの『ビッグプロジェクト』であり『長期プロジェクト』でもある」、ジュールさんはこのように見ている。彼は「多少の辛抱は必要だが、臨港新片区は全世界の青年英俊が発展に身を投じる価値がある場所だ」と強調する。