「中国の神仙(しんせん、不老不死の力を持つ中国の超自然的な存在のこと)体系はとても複雑で、神仙になると永遠の命を手に入れて自由気ままに過ごせるのか?それとも朝から晩まで働かなきゃいけないのか?」
9月中旬のある日曜日、北京市の海淀区にある「META SPACE」というバーで、「中国の神仙体系」をテーマにした学術トークが開かれていた。扉を開けて中に入ると、冷房の風が心地よい空間に、「神仙にはそれぞれ細かい役割があり、まるで人間の官僚システムのように分担されている」という講師の李天飛(Li Tianfei)さんの声が響いていた。彼は「西遊記文化研究会」のメンバーで、そのユニークな解説に観客は引き込まれ、笑いが絶えなかった。このイベントは「空格工作室」が主催し、今回で13回目の開催。人気が高まり、すでに7つの500人規模のグループが満員になっている。
北京にある学術バーで、トークイベントの盛り上がりの場面で、スマホで撮影する観客(提供写真、資料写真)。(c)CNS
最近では、北京市や上海市、広州市(Guangzhou)などで「学術バー」が新しい文化現象として広がっている。これまでスポーツ観戦やエンタメ番組が流れていたバーのスクリーンには、学術的なスライドが映し出される。客は特製ドリンクを注文することで、このトークに参加でき、新しい知識を得たり、他の客と意見を交わしたりできる。こうした「知識が主役」のバーは、若者にとって勉強とリラックスの両方ができる場所になりつつある。
実は、この学術バーのアイデアは日本で先に流行していた。東京大学(Tokyo University)近くにある学問的会話ができるバーは、2005年に開店して以来、東京の学術コミュニティの集まりとして知られている。毎週、哲学や文学、最新技術などをテーマに講座や読書会が開かれ、学生や一般の人が集まっている。
中国でも、それぞれの都市で独自の学術バーが増えている。たとえば、上海市にある「逓酒人民壹院The Tiny Bar」では、元医療関係者のオーナーが生物医学についての講座を開き、これまでに27回行われている。また、「街塁Bunker」というバーは、人文社会学やユニークな文芸的雰囲気で若者を惹きつけており、講座テーマも中東史や上海進化論など、幅広い内容が特徴だ。哲学的なテーマが印刷された紙ナプキンが置かれていて、それがまた話題を生むこともある。
SNSでは一部の人が「勉強なのか遊びなのかよくわからない」という声もあるが、学術バーは「心の休憩所」や「知識探しの場」として、多くの若者が楽しんでいる。中国では、こうしたトークイベントの場が温かみのあるコミュニティバーで開かれることが多く、そこにいることで新しい発見が得られるのも魅力だ。北京の「宇宙客庁」では、自由に本を読んだり、店内の装飾を変えたり、オーナーに提案して新しいメニューを作るなど、自宅のリビングルームのようにリラックスできる空間が提供されている。
「宇宙客庁」のオーナー、老宇宙(%%Lao Yu Zhou%%)さんは、「このバーをみんなの『リビングルーム』のような場所にしたい。安心してくつろげるコミュニティとして、ここでひとりでリラックスすることも、他の人と話し合って友達を作ることもできるようにしたい」と話している。(c)CNS/JCM