「Bゾーンでソファやデッキチェアを取れなくてもがっかりしないでね。出発ロビーの『好利来(Holiland)』のお店の脇には自由に寝転がれる緑の芝生迷路があるよ」、北京大興国際空港(大興空港、Beijing Daxing International Airport)で一夜を過ごしたネットユーザー「糖糖(Tang Tang)さん」は、ソーシャルメディア(SNS)プラットフォームを通じて、彼女の「新しい寝床」をリアルタイムで共有した。その結果、多くの「空港寝泊まり客」がその後に続いた。
この空港は多くの利用者によって「再開発」され、最近では「0元シャワーセンター」や無料の「夜間休息所」まで備えた「総合サービスセンター」へと変貌を遂げている。夜になると、空港の待合ホールには、仮眠エリア、休憩エリア、さらに子ども用プレイエリアにはベビー入浴シェルターまで用意され、使い捨てスリッパ、アイマスク、ウェストポーチやトラベルクッションなどを身につけた「夜間旅行客」の一団が、一晩をリラックスした様子で過ごしていた。
この空港は世界最大級の国際空港で、年間の旅客対応能力は延べ1億人と大規模だ。乗り継ぎ客、早朝便の利用客、フライト遅延による待機客などへのサービス改善を目指し、空港は仮眠エリアを設け、リクライニングチェア、角度調整可能な無重力ソファ、無料Wi-Fi、ワイヤレス充電ステーションなどを設置した。
北京大興国際空港の待合室の連結可能なソファエリアで、簡易ダブルベッドをセットして仮眠をとる旅行客(提供写真)。(c)CNS
しかし、「夜間旅行客」たちはもはや空港側が公式に用意した設備だけでは満足できず、独自に秘密の「空港利用マップ」を作成している。ネットユーザー「小白(%%Xiaobai%%)さん」は、SNSプラットフォームで、「B20付近のベビーカー置き場、Cエリアのスターバックスカフェ、インフォメーションデスク近くの緑の芝生で、横になることができる。空港が用意した休憩エリアよりも快適だ」など、自分で発見した「夜の空港・虎の巻」を共有している。
空港の仮眠初心者たちが「ベッド」を探している一方、ベテランの「空港寝泊り客」たちは自分専用の仮眠グッズを持ち込み、「どこでも寝られる」ように準備は万端だ。
ネットユーザー「蚕(かいこ)さん」は、なんとキャンプ用テントと空気で膨らませるマットレスを持参している。彼は「誰もいないコーナーに『個室』を設置して、好きなように体を伸ばして寝ます。寝相が悪いとか気にせずにぐっすり眠れます」と話す。
ソーシャルメディア上の「空港キャンプ」に関する投稿に触発された多くの「寝泊まり仲間」は、試してみたいと意気込んでいたが、管理者側から退去を迫られるのではないかと心配もしていた。これに対し「蚕(かいこ)さん」は皆を安心させるコメントを寄せた。「心配ご無用。私も最初は搭乗口の近くで寝泊まりしていました。そうしたら警備員さんがここは飛行機の離着陸の騒音がうるさいからと、この静かで照明も柔らかい場所を親切に紹介してくれたのです」とコメントした。
しかし、「どこでも横になれる」というだけなら、「0元シャワーセンター」というニックネームはできてこない。大興空港は無料のシャワーサービスまで提供しているのだ。シャワールームはウェットエリアとドライエリアに分かれており、物置台、全身鏡、半身鏡、化粧用鏡、使い捨てタオル、ドライヤーなどが完備されている。「ここでシャワーを浴びるのは気持ちが良い。また浴びに来よう」と、大興空港を利用する「仮眠族」から一様に称賛されているという。
中国では大興空港のほか、杭州蕭山国際空港(Hangzhou Xiaoshan International Airport)、成都天府国際空港(Chengdu Tianfu International Airport)、広州白雲国際空港(Guangzhou Baiyun International Airport)でも、無料の仮眠・シャワーサービスが開始されている。
ちなみに、有料であれば、日本にも東京の羽田空港と成田空港で同様のサービスが提供されている。
さらに大興空港は、仮眠やシャワーだけではなく、読書や映画鑑賞などのサービスも提供されており、利用客は「静かな時間を過ごす」ことができる空港となっている。
北京大興国際空港の「0元シャワーセンター」の物置台と鏡(提供写真)。(c)CNS
あるネットユーザーが「『首都図書館』の『大興空港分館』が搭乗口のそばにあります」と教えてくれた。この分館の読書環境は素晴らしく、もし読書に夢中になり過ぎると心配なら、テーブルのQRコードをスキャンするだけで、搭乗時間になるとスタッフが声をかけて知らせてくれるという親切ぶりだ。
「図書館だけでなく、誰もが推薦するのは無料のデジタルビデオルームでしょう。私は『中国歴代』を鑑賞しました」、別のネットユーザー小蝎(Xiao XIe)さんはこう話す。
「この施設は、床と壁の投影画像を組み合わせる構造で、映像プログラムは『万里の長城(Great Wall)』『京杭大運河』『書画の大家が描いた四季』の3部作です。とても魅力的で、子どもたちはずっと帰りたがりませんでした」と言う。
また大興空港では、誰もが体を動かしながら頭を鍛えるゲーム「空港探偵ライブ謎解き」という新しいアミューズメントも始まっている。
「全部で5つのゲームがありますが、私たちは2つしかプレイできませんでした。ゲームを1つクリアするごとに、冷蔵庫に貼るマグネットと20元(約3019円)分の空港内飲食券がもらえます」、ネットユーザーの「小舟さん」はこの謎解きゲームがとても楽しかったようだ。「スタッフの話では、なんと離陸時間の28時間前に来てプレイした人もいるそうです。私も残りのゲームをプレイするために、もう1枚チケットを買いたくなりました。大興空港には飛行機に乗らない人でもゲームだけを楽しめる『見学チケット』があるので、ぜひ試してみてほしいです!」と語った。
ネットユーザー「Eleanerさん」は「シャワーセンターの設備を全て楽しんだ後で、美味しい食事をしたいと思った利用者は、食事でもきっと満足することでしょう。大興空港には大手レストランチェーンが入っているだけでなく、市内の店と同じ価格と品質で、テイクアウトサービスもあります」と、空港での食事体験にとても満足した様子だ。
「空港の中でどこか『落ち着き場所』を見つけていた場合や、食べたいレストランが少し離れている場合には、空港のテイクアウト専用アプリ『興先送(Xingxiansong)』を開いてデリバリーを注文できます。国際線エリアでも、国内の安全検査エリア内のレストランからデリバリーできます」と説明する。
「首都図書館」の「大興国際空港分館」の一角(提供写真)。(c)CNS
「空港内のフードデリバリーは値段が高くない上に、割引クーポンも利用できます。こんな素晴らしいサービスの空港は他にありますか?」、ネットユーザー「颯颯(Sasa)さん」はこう称賛し、何度か利用した後には多くの「空港寝泊り仲間」と同じように、大興空港の大ファンになったという。
「大興空港さん!もし私があなたの元を離れたら、誰が私を子どものように世話してくれるでしょうか?」と、熱烈な思い入れぶりだ。(c)CNS/JCM