最近、中国全土で「鳳冠(ほうかん)」をモチーフにした冷蔵庫マグネットが大人気となり、発売からわずか4か月で53万個を売り上げる快挙を達成した。この商品は今年の博物館オリジナルグッズ市場でトップクラスの売れ行きを記録し、今なお多くの人びとが購入を希望しているため「入手困難」と言われている。
この大ヒット商品である鳳冠マグネットは、明の万暦帝時代に孝端皇后が使用した「九龍九鳳冠」をモデルとしており、中国国家博物館(National Museum of China、以下「国博」)の地下1階にある古代中国展示エリアで展示されている。この展示品は国博の収蔵品の中でも特に人気が高く、見学するために列を作る必要がある唯一のアイテムであり、「博物館の宝」として広く知られている。
中国国家博物館の古代中国展示エリアに展示されている孝端皇后の鳳冠(提供写真)。(c)CNS
鳳冠をモチーフにした商品が注目を集め始めたのは、今年の夏(7月~8月)のこと。同デザインの冷蔵庫マグネットが販売されると、瞬く間に人気商品となった。中国のSNSでは「鳳冠」に関する投稿が50万件以上に上り、購入者たちが商品写真を共有したり、買うためのコツを教え合ったりしている。「鳳冠マグネットは本当に精巧で綺麗です!朝早くから並んで、ようやく買えました。平日だと少し人が少ないかもしれません」と、購入に成功した人がコメントし、早めの予約を勧める声も多い。
国博2階のグッズショップも「鳳冠」関連商品を目当てに多くの人が訪れるスポットとなっている。特に人気があるのは鳳冠をモチーフにしたオルゴールと七宝焼の絵画で、これらは精巧なデザインに加え、手作業で組み立てる楽しみが特徴となっている。
「オルゴールは1日半かけて組み立てましたが、完成した時の達成感は格別でした。実物は動画で見るよりもずっと美しく、立体感が鳳冠の美しさを引き立てています」と話す購入者の林(Lin)さんは、「簡略版でもこれほど美しいなら、当時の職人たちの技術は本当にすごかった」と感心していた。
国博では、鳳冠をテーマにしたキーホルダー、ブックマーク、メモ帳、ノート、オルゴールなど10種類以上のオリジナル商品を販売しており、どれも多くの消費者に愛されている。中国のメディアによると、鳳冠シリーズのグッズの売上総額は1000万元(約2億1434万円)を超え、過去20年間で国博のオリジナル商品として最も売れた商品になった。この大成功は、博物館にとって確かな経済的な利益をもたらしている。
国博のオリジナル商品の大ヒットが社会に与えた影響について、考古学専攻の学生たちは「博物館の商品人気は、人びとの歴史への興味を高め、文化的な雰囲気の向上に貢献している」と述べている。「博物館の商品を通じて、多くの人が初めて足を運ぶきっかけとなり、そこからさらに深く歴史や文化に興味を持つようになるのが大きな意義です」と語った。
こうした人気を背景に、中国各地の博物館は斬新なデザインや新しい形式の商品開発を進め、もともと「堅苦しい」印象のあった展示品を冷蔵庫マグネットやブックマーク、キーホルダーといった日常使いできる商品へと変えている。このように博物館が持つ「敷居の高さ」が下がり、商品を通じて文物を家庭に持ち帰ることができるようになった結果、多くの消費者の心をつかんでいる。
中国国家博物館が発売した孝端皇后の鳳冠マグネット(2024年12月3日撮影、資料写真)。(c)CNS/趙文宇
例えば、甘粛省博物館(Gansu Provincial Museum)の「ブサかわ」マスコット「銅奔馬」や、今回の国博の鳳冠マグネット、さらに河南博物院(Henan Museum)の新作「蓮鶴方壺モチーフのジュエリーペン」など、個性的なデザインの商品が次々と話題を集め、購入熱が高まっている。
中国の報道によると、2023年までに三星堆博物館(Sanxingdui Museum)、故宮博物院(The Palace Museum)、上海博物館(Shanghai Museum)、中国国家博物館、蘇州博物館(Suzhou Museum)の年間売上がすべて1億元(約21億4342万円)を超えており、大型博物館の中にはオリジナル商品が総売上の3分の2以上を占める施設もあるという。これにより、中国国内での博物館グッズへの関心の高さと市場の可能性が示されている。
中国国家博物館が発売した孝端皇后の鳳冠アイスクリーム(2024年12月3日撮影、資料写真)。(c)CNS/趙文宇
中央財経大学(Central University of Finance and Economics)の文化経済研究院院長、魏鵬挙(Wei Pengju)氏は、「博物館グッズの流行は、中国文化がトレンドになりつつある『国潮』という現象を反映しています」と述べている。国潮(中国伝統の要素を取り入れた国産品)の核心は中国文化への自信と誇りであり、こうした人気の背景には、国民の文化意識の高まりがあると分析している。「博物館は歴史的な文化財だけでなく、さらに広範な文化を扱うことで、伝統的な美学が現代に新たな命を吹き込むことができる」と結論付けている。(c)CNS/JCM