6月は中国で高考(大学入試)や中考(高校入試)が行われる時期であり、中学生にとっては進学を左右する重要な試験だ。最近では、縁起を担ぐために、子どもの合格を願う保護者たちの間で「祈福(祈願)」関連の文化創造商品が注目を集めている。
孔子(Confucius)の故郷である山東省(Shandong)曲阜市(Qufu)に位置する孔子博物館には、多くの受験生が訪れている。同館の典蔵部主任・褚紅軒(Chu Hongxuan)氏によると、館内には古代科挙(中国の官僚登用試験)に合格することを願う意味が込められた孔子家由来の品々が多く所蔵されているという。
例えば、館蔵の清代の香炉「鶴足炉」は、鶴の足の形を模して作られており、蓋にはサギ(鷺)とハス(蓮花)が透かし彫りされている。「鷺」は「路」(道)と、「蓮」は「連」(連続)と音が似ているため、「一路連科(試験で連続して合格する)」という縁起の良い意味が込められている。褚氏は、「古代の人びとは、縁起の良い動植物の模様が入った陶磁器や玉器を好んで用い、『図があれば意味があり、意味があれば吉祥』という文化が育まれてきた」と語る。
孔子博物館にある土産物店で販売されている孔子のキャラクターを模した済寧の面塑(小麦粉を使った工芸)(2023年5が圧10日撮影、資料写真)。(c)CNS/崔楠
孔子を祀るだけでなく、孔子博物館の文創グッズ(文化や芸術をベースにした創造的な商品)を買い求めることも来館の主目的となっている。中でも「転ばない=落ちない」ことを意味する「考不倒」の起き上がりこぼしや、「馬到成功(馬が駆けてすぐ成功する)」を象徴する玉馬のストラップなどがヒット商品となっている。
山東省濰坊市(Weifang)の青州博物館(Qingzhou Museum)は、明代の状元(科挙の最優秀合格者)・趙秉忠(Zhao Bingzhong)の試験答案を収蔵していることから、同様に受験シーズンに多くの来館者を集めている。この答案は400年以上前のもので、全文は2460字。端正な書体で、一字の誤りもない。
同館の展示部主任・王麗媛(Wang Liyuan)氏は、「多くの保護者や子どもたちが『状元の答案』を目当てに訪れ、これを通じて子どもたちに『金榜題名(試験合格)』の夢を持たせたいと願っている」と語った。SNS上では「字が美しすぎて見惚れる」「子どもと一緒に見に行って、秀才の気をもらった気がする」などの感想が寄せられている。
この『満点答案』からインスピレーションを受けて、青州博物館では手帳、マグネット、マウスパッド、ぬいぐるみなど10種類以上の文創グッズを開発し、すでに累計3万点以上を販売している。
「祈福文創」は中国の他地域でも同様に人気を博している。杭州博物館(Hangzhou Museum)が販売する「独占鰲頭(首席合格)」を意味するマグネットや、北京市の孔廟和国子監博物館(Kongmiao and Imperial CollegeMuseum)で売られている「魚躍龍門(鯉の滝登り)」をモチーフにした香り袋などが大人気だ。
上海市の英雄文創セレクトショップでは、市民の張潔(%%Zhang Jie%%)さんが、牡丹の花を巻き付けた蛇の模様が描かれた万年筆に目を留め、しばらく立ち止まった。「『蛇来運転(幸運が巡る)』の意味がよく、牡丹の華やかさもあって、娘に落ち着いて試験に臨んでほしいと思って買った」と語る。
ショップの店長によると、「5月の最終週末だけで、筆セットが100セット近く売れた。『蛇が牡丹を巻き、名筆が出世を招く』という縁起の良さが支持されている」と話す。
また、上海造幣有限公司が展開する記念の金・銀のプレート「逢考必過(試験に必ず合格)」シリーズも今人気の商品となっている。2024年に登場し、2025年版は「錦鯉呈祥、旗開得勝(吉兆をもたらす錦鯉、勝利の門出)」というデザインで刷新され、受験生を持つ保護者に人気の「お守り」となっている。
このような祈願を込めた文創グッズには、現代中国人の縁起文化への思いと美意識が込められている。褚紅軒氏は「古今を通じて、中国人が吉祥の象徴を大切にしてきたことが分かる。幸せを呼び込もうとする願いは、世代を超えて共有されてきた」と語った。(c)CNS/JCM