「高鉄が鳴れば、黄金が湧く」
最近、貴州省(Guizhou)の盤興高速鉄道と、遼寧省(Liaoning)瀋陽市(Shenyang)から長白山(Changbai Mountain)へ至る瀋白高速鉄道がともに最終段階に入った。5月21日には、盤興鉄道の全線における枕木の製造がすべて完了し、2025年11月の開業に向けて堅実な基盤が築かれた。瀋白高鉄も全線の軌道敷設が完了し、9月末には開通予定である。
南西から東北まで、貴州省と遼寧省はいずれもそれぞれの地域で初の「すべての市が高速鉄道でつながる」省になる見通しだ。
瀋陽市大東区の新開河沿いで、防音壁の設置作業が進められている瀋白高速鉄道の建設現場(2025年1月12日撮影、資料写真)。(c)CNS
この中国対角線を横断する高速鉄道の突進は、単なる交通の突破にとどまらず、地域経済の構造再編における重要な一手でもある。
貴州のカルスト地形は「三里とて平らな地なし」と言われ、これが長らく発展の足かせとなってきた。一方、遼寧は旧工業地帯として、伝統産業の転換や地域連携の不足といった課題に直面してきた。
高速鉄道網の全域接続は、まるで地域発展の経絡を開通させたかのようで、経済要素の効率的な流動を可能にする。
例えば、盤興高鉄の開通により、貴州省貴陽市(Guiyang)から黔西南プイ族ミャオ族自治州(Qianxinan Buyei and Miao Autonomous Prefecture)の州都・興義市(Xingyi)まで約2時間で到達できるようになり、省内8つの市(州)の中心都市が1~2時間で結ばれる高鉄交通圏が正式に形成される。
瀋白高鉄は、遼寧省撫順市(Fushun)が高鉄の空白地帯だった状況を解消し、遼寧の高鉄網における西側の密集と東側の希薄という偏りを是正するだけでなく、瀋陽を核とする1時間都市圏の形成を加速させるだろう。
このような時間と空間の圧縮効果が、鉄路の力によって地域経済の発展構造を深く変えつつある。
第一に、要素の流動性の面では、人の流れ・物流・情報流が「時間圏」内で段階的に広がっていく。
多くの都市が高速鉄道の建設にしのぎを削っているが、高鉄そのものは利益を生むビジネスではない。長年にわたって高鉄建設の最大のボトルネックは資金や技術ではなく、現実的な需要があるかどうかにあった。
例えば、全長約98キロの盤興高鉄は、貴州省内の高鉄路線で橋やトンネルの比率が最も高い。カルスト地形を通過するため、鍾乳洞や亀裂といった地質的課題を抱えており、施工難易度は容易に想像できる。
それでも、なぜこのような鉄道を西南部に建設する必要があるのか。
それは、興義市が高鉄で接続されていないという歴史を終わらせることに加え、黔西南プイ族ミャオ族自治州地域の発展が急務だからだ。
高鉄でつながる黔西南プイ族ミャオ族自治州と六盤水市(Liupanshui)を例にとると、2024年の両地域のGDPは合計3189.5億元(約6兆4511億円)で、これは貴州省全体のわずか14%にすぎない。高鉄が開通すれば、興義市は滬昆高鉄という大動脈と接続されることになり、観光業や農産品の流通に大きな乗数効果をもたらし、これが地域経済の成長エンジンとなる。
東北地域に目を向ければ、瀋白高鉄の開通によって吉林省(Jilin)通化市(Tonghua)・白山市(Baishan)・延辺朝鮮族自治州(Yanbian Korean Autonomous Prefecture)などが瀋陽市や北京市との時間距離を大幅に縮めることになり、京津冀地区(北京・天津<Tianjin>・河北<Hebei>)の観光客がより短時間で長白山を訪れることが可能となる。
第二に、省域内交通の循環が円滑になり、中心都市の周辺への波及効果が高まる。
高速鉄道は、高速、大容量、低エネルギー消費、低汚染といった特性を備え、中距離の移動において非常に高い競争力を持つ。特に省内では、主要都市間の通勤時間を1~2時間に短縮でき、地理的な障壁を取り除き、都市の一体化を促進する。
高鉄によって生じる「同一都市圏」効果は無視できない。
例えば、遼寧省の計画では、撫順は瀋陽都市圏内で「同城化発展」を実現すべき重要な位置づけとなっている。
瀋白高鉄は撫順市・本渓市(Benxi)・通化市などを経由し、設計速度は時速350キロに達し、撫順から瀋陽までの移動時間は10分以内に短縮される見通しだ。両都市の距離がどんどん縮まる中で、より多くの連携が生まれるだろう。
産業連携の面でも、瀋陽は装備製造業に強みがあり、撫順は瀋陽の装備製造や機械加工産業を積極的に受け入れてきた。時間と空間の距離が縮まることで、両都市はより緊密な産業共同体を形成するだろう。
ただし、高鉄沿線の「同一都市圏」効果が顕著になる一方で、「吸い上げ効果」を避ける必要もある。そのためには、産業分業(例:撫順が製造業支援を強化)や差別化された都市の役割設定によって、地域間のバランスを図ることが求められる。
鉄道建設は内需を引き出す重要なエンジンであり、高速鉄道網の整備は「流動する中国」の活力と可能性を映し出している。
とはいえ、高鉄はどこでも建てられるわけではなく、またその建設は競争ではない。現地の実情や需要に応じて、身の丈に合った展開を図るべきである。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM