このほど、米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービス（Moody's Investors Service）は中国に関する報告書を発表し、中国の主権信用格付け「A1」を据え置く決定を下した。

報告書は、中国経済は巨大な規模と活力、そしてイノベーション能力を備えていると指摘している。最近の傾向を見ると、成長の質は着実に向上し、経済の強靱性が一層高まっているという。

中国財政部の関係者もこの格付け判断について、「中国経済の明るい見通しに対する前向きな評価だ」と述べた。

深セン湾の後海CBD（中央ビジネス地区）。力強い経済成長を支える中国南部の都市の一つ（撮影日不明、資料写真）。(c)CNS

4月初旬に米国が相次いで関税引き上げ措置を発表し、世界の市場は動揺した。この中で、ムーディーズとは別の国際格付け機関フィッチ・レーティングス（Fitch Ratings）は中国経済の成長見通しと国際貿易における重要な地位を評価しながらも、中国の主権信用格付けを「A+」から「A」へ引き下げた。

このような不確実性の連鎖が広がる中、中国経済の強靱性が試された。しかし2か月が経過しても市場が目にしたのは「崩壊」ではなく、圧力に耐え、安定成長を実現する中国の姿だった。

最新のデータによると、4月の中国の規模以上の工業付加価値は前年同月比6.1％増、サービス業生産指数は6.0％増、貨物の輸出入総額は5.6％増となった。工業生産とサービス業は回復を加速し、輸出入も安定を維持しており、市場に信頼と前向きな期待をもたらしている。

中国経済が困難に対応しつつ安定的に運営されているのは、何に支えられているのか。

第一に、内需の支えが強まっていることだ。

「中国の内需が重要な支えとなっている」と、中国人民大学（Renmin University of China）・重陽金融研究院の研究員である劉英（Liu Ying）氏は三里河の取材に答えた。投資面では「二重重点」（国家の重大戦略の実施と重要分野の安全保障能力の構築）プロジェクトが着実に進められており、消費面では巨大な市場に加え、「二新」（大規模な設備更新と消費財の買い替え）などの政策が活力を引き出しているという。

同時に政策対応も迅速に行われている。劉氏は「より積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策の相乗効果が、景気の下支えを強化し、経済発展に力強い後押しをしている」と述べた。

ムーディーズもこの点に注目している。報告書では、中国政府の的確な政策により、生産性の高い産業が急成長し、地方債務や不動産リスクが収束しつつあることが、金融システムの安定維持と市場の信頼向上に寄与していると分析している。

第二に、外需の衝撃耐性も試練に耐えた。

4月の中国の貨物輸出入総額は前年同月比5.6％増、うち輸出は9.3％増と高い伸びを維持している。対米貿易が減少する一方で、東南アジア諸国連合（ASEAN）や「一帯一路（Belt and Road）」沿線諸国との貿易が加速し、輸出入全体の安定的な成長を支えている。

構造が変化し、経済の成長エンジンも変わりつつある。

内需とイノベーションの相乗効果が、中国経済の重要な原動力となっている。4月には、規模以上のハイテク製造業とデジタル製品製造業の付加価値がいずれも前年同月比10.0％増となった。

「各地で地域の特性に応じて、伝統産業のデジタル化・グリーン化・高付加価値化の改造が進められており、新興産業や未来産業も勢いよく発展している。これが中国経済の高品質な発展を後押しし、外部からの圧力に対する有効な防波堤となっている」と劉氏は語る。

さらに劉氏は、最近実施された「中華人民共和国民営経済促進法」や「中国式現代企業制度の改善に関する意見」といった法律や制度面での新たな動きが、中国経済のイノベーション活力をさらに刺激していると述べた。

ムーディーズによる格付け据え置きは、中国経済の基礎的な強さに対する国際的な肯定であり、信頼感の回復や市場安定、期待感の醸成に資するものだ。

不確実性に満ちた世界において、自らのリズムを保ち、揺るぎなく自国の課題に取り組むことは決して容易ではない。ムーディーズの格付けは、外部の観察者が出す評価にすぎないが、そこに込められたメッセージは明確だ。「自らの道を着実に歩むこと」が、最も評価される対応策だということだ。

「安定」は変動に耐える前提であり、「前進」は周期を乗り越えるための方向性である。基盤の安定、多様な強み、高い強靱性、大きな潜在力こそが、中国経済があらゆるリスクや課題に対応する自信と底力の源となっている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM