中国で「消費首位都市」が再び入れ替わった。最新の上半期データによると、重慶市(Chongqing)の社会消費品小売総額は8300億3700万元(約16兆9951億円)で、前年同期比4.5%増となった。上海市は8260億4100万元(約16兆9133億円)で、前年同期比1.7%増。わずか約40億元(約819億円)の差で、重慶が上半期の「都市消費チャンピオン」の座を獲得した。
今年の首位争いは激しいシーソーゲームとなった。1~2月は重慶が初めて首位に立ったが、5月には上海が単月7.5%増で逆転。6月に重慶が再び追い上げ、僅差で前半戦を制した。
重慶市の夜景=2025年7月30日撮影・資料写真(c)CNS/何蓬磊
逆転の背景には、都市の特性を徹底的に活かした取り組みがある。長江(揚子江、%%Yangtze River%%)と嘉陵江が交わり、山に囲まれた立体的な地形は、発展の障害にはならず、むしろ「8D魔幻都市」として独自のブランドとなった。重慶はこの特徴を利用し、「江崖街洞天」(川沿い・遊歩道・裏通り・防空壕・屋上)と呼ばれる多彩な消費空間を構築した。全市で286か所の「山城歩道+特色街区+川沿い経済圏」を整備し、坂道や階段のある日常を独自の商業体験に変えている。たとえば、崖沿いの遊歩道を散策した直後に、防空壕を改装した火鍋店に出会う――そんな体験型消費が可能だ。
この新たな消費空間の整備によって沿線店舗の賃料は15~20%上昇し、差別化の強みが経済効果として現れた。都市そのものが「体験型の消費ブランド」となり、重慶は新しい消費トレンドの波に乗った。
消費の拡大は偶然ではなく、政策とイベントによる継続的な後押しがある。重慶市は今年、消費喚起策を打ち出し、家電やデジタル製品を初めて補助対象に追加した。その結果、スマホや家電の売上は大きく伸びた。6月末時点で補助対象取引は累計326万8200件、補助総額は17億100万元(約348億2831万円)に達した。さらに、単発の刺激策ではなく「全域・通年型の消費ムーブメント」を重視し、4~6月に700件超の消費イベントを開催。直接売上は70億元(約1433億2640万円)を記録した。高頻度のイベント開催で消費意欲を持続させ、政策効果を倍増させている。
中西部で唯一の国際消費中心都市である重慶は、人口3000万人超という巨大な消費市場を持つ。さらに、立体的な都市景観や山水の絶景、独自の食文化によって全国的な観光人気を集め、観光客の消費も増加している。上半期の重慶は国内観光客2億3500万人(前年同期比8.6%増)、観光消費額は2507億元(約5兆1331億円、11.9%増)。外国人観光客は92万3000人で、前年比77.2%増と大きく伸びた。
重慶はドローンライトショーを常設化し、観客は累計400万人を超える。ドローン1万1787機による演出はギネス世界記録(Guinness World Records)も樹立した。また「初出店・初披露」戦略にも注力し、過去3年間でブランド初出店は892店舗、各種イベントは120件以上を開催。商業ブランドの進出は、重慶市場の将来性を示している。
重慶の実践は、地域の特色を消費力に変え、政策で市場を持続的に活性化すれば、消費競争で優位に立てることを示している。国家統計局によると、上半期の全国社会消費品小売総額は前年同期比5.0%増で、第1四半期より0.4ポイント加速した。
消費首位都市をめぐる重慶と上海の攻防は、中国消費市場の活力を象徴する。年間の最終的な王者はまだ決まらないが、都市が消費革新を競う物語は今後も続いていく。