東京の上野動物園(Ueno Zoological Gardens)生まれ育ったジャイアントパンダ、香香(シャンシャン、Xiang Xiang)との別れを惜しんで涙する日本人の姿は中国でも大きく報じられ、日本の国民がパンダに注いできた愛情の深さに中国の国民も感動した。シャンシャンは5歳にして、立派に日中友好の架け橋を務めた。
パンダの永明たちの帰国と共に和歌山県のアドベンチャーワールドから繁殖研究基地へ贈られた3頭のパンダをかたどった記念碑の前で記念写真を撮る観光客(2023年2月24日撮影)。((c)CNS/安源)
中国ではパンダの「帰国ラッシュ」が続いている。2月21日にシャンシャンが中国に返還されたのに続き、和歌山県白浜町のテーマパーク、アドベンチャーワールド(Adventure World)で飼育されていた3頭も返還され、同月23日にはパンダ繁殖研究基地がある四川省(Sichuan)成都市(Chengdu)に到着した。白浜町から返還されたのは、30歳のオス「永明(えいめい、Yong Ming)」と、その子供で8歳のメスの双子「桜浜(おうひん、Ying Bin)」と「桃浜(とうひん、Tao Bin)」
永明は1994年に世界初の国際的なパンダ繁殖研究プロジェクトとして来日。16頭の子供を残した。
永明たちの帰国と共に、アドベンチャーワールドから繁殖研究基地へ3頭のパンダをかたどった記念碑が贈られた。3頭とは永明と、永明との間に6頭の子供をもうけた「梅梅」とその子供。30年近くにわたった共同研究の成功をたたえ、さらなる協力と日中友好への期待が込められた記念碑だが、何より健康に生まれ育って帰国したパンダたちこそが、時として政治的な緊張や対立をはらみつつある日中間で、多くの関係者や国民同士が、互いへの敬意を失わず何とか友好関係を保とうと努力してきた証だろう。永明と一緒に帰国した双子の子供、桜浜と桃浜は、今月末に一般公開される見通しという。
今、中国で話題となっているのがアメリカのメンフィスで飼育されている22歳のメスのパンダ、丫丫(ヤーヤー、Ya Ya)の帰国計画だ。ヤーヤーは、20年前の2003年4月、オスの楽楽(ラーラー、Le Le)と共に渡米。貸与期間が終了する今年4月、ラーラーと共に帰国する予定だったが、そのラーラーが2月に急死してしまうという不幸に見舞われた。
更に、最近の写真のヤーヤーは、毛が抜けて痩せ細ってしまったようにも見え、中国国内では「パンダがアメリカで虐待されているのではないか」などの憶測を呼んだ。こうした不審が生じるのは、最近の米中関係の悪化とも無関係ではない。だが、渡米した中国の専門家チームによれば、ラーラーは病死、ヤーヤーは皮膚病で毛が抜けてしまった以外は、食欲も旺盛で体重は安定しているとのこと。もちろん2頭のパンダはメンフィスの動物園できちんと世話をされてきて、虐待などされた事実はない。現在は、米中双方によってヤーヤーの帰国に向けた準備が進められているという。
中国はパンダを平和の象徴として外交手段にしてきた。愛くるしい姿とひょうきんな動作を見せるパンダは平和そのものに見える。だが、忘れてはいけない。平和をつくるのはパンダではなく、人だという事実を。(c)東方新報/AFPBB News
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