「マイカーを持てて幸せです。車で旅行するのが好きで、途中の風景を楽しみます」
そう喜ぶのは、国産車を最近購入したという北京市の高校教諭。販売台数で世界トップの自動車市場となった中国で、マイカーは庶民の生活にすっかり溶け込んだ。
中国全土の自動車保有量は昨年9月末で4億3000万台、ドライバーは4億8000万人に達した。カーライフを楽しむ人が増えるに伴い、新車購入後の修理や中古車売買といった自動車のアフターマーケットにも強い関心が向けられるようになっている。
中商産業研究院のデータによると2023年の自動車アフターマーケットの市場規模は6兆9000億元(約142兆1918億円)。2025年までに修理やメンテナンスサービスの市場だけで1兆7000億元(約35兆328億円)に達すると予想される。
蘭州市で行われた自動車修理大会に参加する選手たち(2023年11月22日撮影、資料写真)。(c)CNS/李亜竜
市場規模の着実に成長しているが課題はその質だ。例を挙げればきりがない。
湖南省(Hunan)長沙市(Changsha)の男性は最近、愛車のヘッドライトを破損してしまった。うっかりガードレールにぶつけてしまったのだ。修理店を探して新しいライトに交換してもらったのだが、1か月もたたずして新しいライトも壊れてしまった。
不審に思った男性は、別の業者を訪ね熟練工に調べてもらったところ、新品のはずのライトは中古品だったと明かされた。最初の修理店に苦情を言ったものの、相手は過失を認めなかったという。
「以前から自動車修理にはトラップが多いと聞いたことがありますが、まさかこんなに多いとは思っていませんでした」
山西省(Shanxi)太原市(Taiyuan)の別の男性は、エンジンをかける時に異常を感じ地元の自動車修理店に行って検査してもらったら、点火プラグに問題があり6つある点火プラグを全て交換しなければエンジンがダメになると言われた。やむなく交換してもらったが、修理から数日もたたないうちにまたエンジン作動時に同じような異常が現れた。再び修理店に行く羽目になったが、実は最初の修理で6つの点火プラグのうち3つしか交換されていなかった。
男性は「3つしか替えてないのに、6つ分の料金を取るとはブラックすぎる」と腹を立てている。
中国で似たような話は少なくない。詐欺やボッタクリのような手口で金銭的な不利益を被るのみならず、換えた部品に中古品や不良品が使われていたら安全上の危険さえ生じかねない。
そうした中、中国政府は自動車のアフターマーケットに特化したものとしては初めてとなる意見書を発表した。それが商務部など9部門の共同による「自動車アフターマーケットの高品質発展の推進に関する指導意見」で、部品流通環境の最適化、修理サービスの質の向上などの方針を示している。
自動車アフターマーケットの健全は発展と成熟が誰もが望むところだ。インターネット大手が次々とこの分野に参入する流れも起きており、その期待値は高い。(c)東方新報