2024年のわずか4か月で、中国にある伊勢丹（Isetan）の3つの店舗が閉店を発表した。

4月14日、天津市（Tianjin）南京路にある伊勢丹が正式に閉店し、27日には同市の浜海新区の店舗も閉店することになった。それよりも前に、上海梅龍鎮の伊勢丹は6月30日に閉店すると発表し、現在閉店セールが行われている。読売新聞（Yomiuri Shimbun）を含む多数の日本のメディアが現場に駆けつけ報道している。

この結果、中国本土に残る伊勢丹は天津市の仁恒店のみとなった。情報筋によると、この店舗が存続できる理由は、「若い」こと（開業からわずか3年）と、中国の仁恒置地集団（Yanlord Land）と共同で開発されたプロジェクトであるためだ。つまり、その生存は伊勢丹の一般的なビジネスモデルからの脱却によるものだ。

これらの動向から、中国での日本の伝統的な百貨店がもはや人気がないことを示す信号が出ている。これは残念な兆候だが、日本の百貨店はかつて中国の発展した経済地域の一時代を象徴していた。それは当時の小売業界のリーダーであり、流行とトレンドの象徴であり、90年代に疾走した地元の中年層にとっての青春の象徴だった。

日本の百貨店グループである伊勢丹はその代表例だ。20世紀の最後の10年間に中国に進出し、多くの高品質な商品を集め、その専門的で高水準のサービスが中国の人びとから称賛された。当時は、伊勢丹の商品を使用することはもちろん、伊勢丹のショッピングバッグを持って街を歩くだけで注目された。

伊勢丹が中国で次々と店を閉じるのは、実際には店舗側が主張するリースの満了だけでなく、業績が持続的に低下しているためだ。2023年3月から11月にかけて、上海梅龍鎮の伊勢丹は3億7600万円の損失を記録した。実際に、イトーヨーカ堂（Ito Yokado）などの日系企業も赤字が続き、中国での事業を縮小している。

上海市の伊勢丹にある洋服店（撮影日不明、資料写真）。(c)東方新報

中国市場での伊勢丹の縮小は、タイムリーに市場の変化に対応できず、長年にわたって過去のビジネス哲学を維持し続けたため、時代遅れと見なされ、消費者のニーズと乖離している。多くの中国のネットユーザーは、上海梅龍鎮の伊勢丹にいると、まるで10年前から時間が止まったかのような感覚を覚え、上の階に行くほどその感覚は強まると述べている。

伊勢丹が初めて中国市場へ進出した頃と現在では、ビジネス環境や消費観念に大きな変化が見られる。以前は、日系の百貨店が高級商品の主要な販売プラットフォームとして位置づけられ、消費者に対して細やかなサービスを提供していた。伊勢丹はそのような環境下で容易に良い評価を得ていた時期もあったが、中国の経済発展と都市化の進展により、デパートが多くの都市で一般的な存在になると、新しい高級デパートの登場により伊勢丹の存在感は薄れてきた。上海国金センターモールや（IFC Mall）、SKP、上海老仏爺百貨（Galeries LafayetteShanghai）といった施設がその例だ。

これに加えて、伊勢丹を含む日本の百貨店は、単なる業界内の競争だけでなく、アウトレットや大型ショッピングセンターといった新しい小売形態の挑戦に直面している。これらの施設は、従来の百貨店と比べて広いスペース、多様なブランドの提供、大幅な割引、そして飲食やエンターテイメントを含む消費者の多様なニーズに応えることが可能だ。

さらに、オンラインショッピングの効率性とコストパフォーマンスが、多くの消費者に画面をタップするだけで商品を購入する方法を好ませる理由となっている。これは、実店舗を持つ伊勢丹にとっても大きな圧力となっており、消費者の購買行動が変化する中での課題を示している。

百貨店が中国で時代遅れになったのか、それとも日系百貨店が中国で支持されていないのか？実際にはどちらも違う。一方で、多くの古い百貨店はアップグレードを行い、「第二の春」を迎えており、若者向け、アニメ、環境保護をテーマにした新興百貨店が人気を集めている。例えば、寧波阪急は開店年に大きな売り上げを記録し、中国のトップ50にランクインした。また、上海新世界大丸百貨（Shanghai New World Daimaru）は専門化粧品の販売に特化し、業績を伸ばしている。

これらの百貨店が中国市場で確固たる地位を築くことができたのは、戦略を熟知し、状況を有効に活用しているからだ。彼らは特定の分野に焦点を当て、その分野をモールのハブとして発展させることがある。また、デジタル化、没入型体験、文化的ファッションなど、新しいテーマを強調しながら、高品質のショッピング体験を提供し、消費者の社会的および娯楽的なニーズを満たしている。

中国市場は依然として活気に満ちた市場だが、決して楽に勝てる市場ではない。中国市場で確固たる地位を築くためには、戦略を理解し、状況を利用することが重要である。日本企業は、伊勢丹の事例から教訓を得るべきだ。(c)東方新報