百年以上の歴史を持つ上海市・南京路（Nanjing Road）は、「中華商業第一街」と呼ばれ、上海のショッピングとエンターテインメントを象徴する存在だ。一年365日、いつ訪れても南京路歩行街は人でにぎわい、活気にあふれている。そのにぎわいが、いまメタバースという仮想空間に再現されている。

南京路商圏をテーマにした「南歩新楽元」は、中国移動（チャイナモバイル、China Mobile）の5Gとコンピューティングネットワークを基盤に、高精度モデリング、クラウドゲームエンジン、バーチャルアバター「数智人」などの先端技術によって構築されたメタバース空間である。

ユーザーは、「上海南京路歩行街」の微信（ウィーチャット、WeChat）ミニプログラムなどを通じて、この南京路のメタバース空間にアクセスできる。自分自身の数智人アバターを作成すれば、南京路歩行街の高精度なデジタルツイン空間を360度あらゆる角度から自由に体験することができる。「南歩新楽元」には、新世界城、世紀広場、新世界大丸百貨といった3つの主要なランドマークに加え、永安百貨などの歴史的建物も仮想空間に再現されている。

プロジェクトを担当する中国移動通信集団上海有限公司のプロジェクトマネージャー・陳禕聞（%%Chen Yiwen%%）氏は、「AI、AR、5G通信、大規模データ分析といった先端技術を活用している」と説明する。特にAIはAR機能の中核技術となっており、周囲の環境を高精度で認識し、実際の街並みに仮想の要素をリアルタイムで重ね合わせることができる。たとえば、かつての街の風景を再現したり、バーチャル広告を表示したりすることが可能になる。

また、AIはメタバースのあらゆる機能に活用されている。AI搭載のバーチャルナビゲーションシステムは、観光客にリアルタイムでルートを案内し、店舗や観光スポットの情報を提供する。さらに、ユーザーの行動データをもとにAIが分析を行い、商業レイアウトやマーケティング戦略の最適化にも貢献している。AIを活用したスマートカスタマーサービスでは、音声やテキストによるリアルタイムのやり取りが可能となり、観光客の疑問に答えるとともに、個別のおすすめ情報も提供できる。加えて、AIによるパーソナライズ機能により、ユーザーの好みや利用履歴に応じた専用コンテンツが提供され、参加意欲や満足度をさらに高めている。

「南歩新楽元」は、上海市が発表した第1期メタバース主要活用シーンの一つにも選ばれている。上海市商業連合会・南京路歩行街企業連合会の会長であり、上海新世界（集団）有限公司の董事長である陳湧（Chen Yong）氏は、「南歩新楽元は、新技術を活用して商業施設に新しい露出機会と転換の道をもたらしており、メタバースを通じて実店舗ビジネスを活性化する重要な挑戦だ」と話す。

百年の歴史を誇る南京路歩行街が最先端テクノロジーと融合し、伝統と革新が交わることで、メタバースの中で新たな輝きを放ち続けている。(c)東方新報