中新経緯(Economic View)経済研究院と国家広告研究院は3月13日、共同で「中国ブランド出海十大案例(中国ブランド海外進出・十大事例)」報告書を発表した。これは「2025中国ブランド出海シリーズ報告」の第1弾にあたる。
報告書では、2024年における代表的な中国ブランドの海外進出事例として、以下の10件を紹介している。比亜迪汽車(BYD)が世界の新エネルギー車販売で首位を維持したこと、自主開発ゲーム「黒神話:悟空(Black Myth:Wukong)」のブレイク、家電分野における中国製品の人気拡大、フィギュア大手ポップマート(Pop Mart)などオリジナルIP(知的財産権)の海外展開、クロスボーダー決済の急拡大、国産ロボットの欧州市場進出、ミニドラマの海外人気拡大、三蹦子(中国製三輪自動車)の新興国市場での流行、中国飲食ブランドの海外出店ラッシュ、そして中小企業による強力な海外進出などである。
報告は、中国ブランドの「出海(海外進出)」がかつての製造業中心から、技術革新、ブランド力、文化発信など多角的な構成へと変化していることを強調している。特に、「構造の高度化」と「新たなアイデアの豊富さ」が現在の特徴であり、新エネルギー車やスマート機器、デジタルエンタメ分野の台頭がその一例である。
北京市にあるゲーム販売店で流れている『黒神話:悟空』のプロモーションビデオを撮影する人(2024年8月20日撮影、資料写真)。(c)CNS/易海菲
たとえば、自動車分野ではBYDが2024年に世界で425万台を販売し、新エネルギー車市場で首位を堅持。吉利汽車(Geely Automobile)など他の中国車メーカーも海外で存在感を示している。家電業界では、海爾(ハイアール、Haier)、海信集団(Hisense Group、ハイセンス)、TCL科技集団(TCL Technology)といった中国ブランドが技術革新によってグローバル市場でシェアを拡大している。新松(Siasun)、石頭科技(Roborock)といったスマートデバイス企業も、欧州市場で「メード・イン・チャイナ」の技術力を示している。
また、中国の巨大かつ高効率なサプライチェーンも、海外市場での競争力の源泉となっている。例えば、東南アジアやアフリカで人気の中国製三輪自動車は、その価格と品質のバランスが評価されている。繊維・アパレルでは、子供服の生産・販売の織里鎮中国童装城が希音(シーイン、%%SHEIN%%)や拼多多(%%Pinduoduo%%)といったECプラットフォームを活用して輸出を拡大している。飲食・茶飲ブランドでは、海底撈(Haidilao)や霸王茶姫(%%CHAGEE%%)が現地ニーズに応じた製品開発で集客力を高めている。
加えて、文化的側面もブランドの差別化要素として重要になっている。2024年には、中国のオリジナルIPが国際的に存在感を強め、「黒神話:悟空」は「流行ではなく品質で勝負する」ゲーム開発の成功例として注目された。中国発のミニドラマも2023年の約3200万回のダウンロードから、2024年には3.7億回へと急増し、前年比1157パーセントもの伸びを見せた。ポップマートなど潮玩(トレンドトイ)IPも、海外店舗展開を加速させている。
さらに、クロスボーダー決済市場の成長も中国ブランドの国際展開を後押ししている。2024年、人民元建てクロスボーダー決済の取扱額は175万億元(約3598億5250万円、前年比43パーセント増)に達し、支付宝(アリペイ、Alipay)や微信支付(ウィーチャットペイ、WeChat Pay)も海外対応を強化している。報告書は「決済+EC+物流」のエコシステムが、中国企業のグローバル展開に大きく貢献していると指摘している。
報告書はまた、中国ブランドの海外進出が単なる商品輸出から、「技術・ブランド・ローカライズ」の多次元戦略へと進化していると述べている。製造業の高度化、サービスの体系化、文化コンテンツとの融合によって、「安かろう・悪かろう」のイメージを脱し、持続的な価値創造が求められている。
専門家たちはこうしたトレンドを「技術驚嘆から価値共創へ」の転換と捉えており、中国ブランドは国際市場での認知と影響力を高めていく段階にあると分析している。中国広告協会会長の張国華(Zhang Guohua)氏は「真の国際化とは、単に売上を伸ばすことではなく、文化や価値観を乗り越えるブランド力を構築すること」と語っている。
国家広告研究院の王昕副(Wang Xinfu)院長も、「ブランドが文化の橋渡しとなることで、中国ブランドは世界でより広く受け入れられるようになる」と述べており、技術・文化・国際ネットワークの総合力こそが、グローバル競争で勝ち抜く鍵だとしている。
報告書は最後に、「技術革新・ブランド深化・文化輸出」の三位一体こそが、これからの中国ブランド海外戦略の新たな柱になると結論づけている。(c)東方新報