中国で、要介護高齢者のケアを担う新たな国家資格「長期照護師」が創設され、初の資格試験が4月19日に江蘇省(Jiangsu)南通市(Nantong)で実施された。定員100人の初回試験に対し、全国から900人以上が応募する注目ぶりで、4月28日には81人が合格し、正式な有資格者として認定された。
「長期照護師」は、生活支援や医療的介護に対応する専門職として国家医療保障局が定めた新しい職業で、2024年2月に国家職業基準が制定された。高齢化が急速に進む中国では、介護人材の育成と制度整備が急務となっており、今回の資格制度導入はその一環と位置づけられる。
中国初の「長期照護師」職業資格証書が江蘇省南通市で授与され、証書を受け取った人たち(2025年4月28日撮影)。(c)CNS/許叢軍
中国では2016年から長期介護保険制度(長護保険)の試行が始まり、2020年には対象都市が49に拡大。現在、全国で1億8000万人以上が保険に加入し、累計260万人以上が給付を受けている。だが、介護従事者数は依然として30万人余りにとどまり、制度が全国展開されれば1000万人規模の人材不足が生じると見られている。
制度の担い手となる「長期照護師」への関心は高く、試験を実施した南通市医療保障研究会によると、今後は通年実施へ移行する予定だという。
初の受験者で資格番号「000001」を取得した王汝芳(Wang Rufang)さん(49)は、半年かけて筆記と実技の試験に取り組んだ。「食事介助など、これまで触れてこなかった技術も学ぶことができた。より専門的に高齢者に寄り添えるようになった」と語る。
2022年には人力資源社会保障部が「長期照護師」を正式な職業に登録し、2024年から国家資格として運用が始まった。資格取得に年齢や学歴の制限はなく、16歳以上で健康であれば誰でも受験できる。試験合格後は、介護施設や訪問介護、評価機関などでの就業が可能となる。
各地でも支援の動きが進んでいる。江蘇省では、資格保有者の採用を優先し、待遇でも優遇。上級資格者のサービスに対しては、長護保険からの給付額引き上げも検討している。
さらに4月には、国家医療保障局と教育部など6部門が連名で通知を発出。大学や職業学校での人材育成を促進し、資格取得者には研修・技能評価に対する補助金支給なども行われる予定だ。
専門家は、長期照護師制度の整備が介護職の地位向上につながると指摘する。初級から上級までの等級制度が設けられたことで、キャリアパスの明確化も進み、今後はより多くの人材がこの分野に流入することが期待されている。(c)東方新報