世界に1体だけという高さ約131センチ・ミントグリーンの「LABUBU(ラブブ)」が10日、108万元(約2154万3732円)で落札された。もう1体のブラウンラブブ(160センチ)も82万元(約1653万7278円)で落札され、アートトイとしては異例の高額に注目が集まった。
このオークションはSNSでも話題を呼び、「これからは泥棒もまずラブブを探す」といった冗談も飛び交った。以前の所有者によれば、このラブブは数万元(1万元は約20万円)で購入したもので、6桁での転売となったという。
北京市のポップマートで販売されているラブブ(2025年6月11日撮影、資料写真)。(c)CNS/張祥毅
ラブブは、2015年に絵本作家・龍家升(Kasing Lung)によって生み出された北欧の森の精霊をモチーフにしたキャラクターで、盲盒(ブラインドボックス、Blind Box)での人気を皮切りに世界的ブームを巻き起こしている。2024年にはタイで「体験アンバサダー」に就任し、歌手のリアーナ(Rihanna)さんや元イングランド代表のデビッド・ベッカム(David Beckham)さんなど海外セレブの間でも話題に。SNSでは「エルメス(Hermes)よりラブブ」という流行語まで登場した。
オークションを企画したキュレーター・早早(Zao Zao)氏も当初は落札されるか不安だったというが、ふたを開ければ会場は満席。小さな子どもまで参加するなど、世代を超えた熱狂が見られた。「ラブブは彫刻であり、アート作品。単なるおもちゃとは違う」と彼女は語る。
ラブブの価格高騰に「自分のラブブも価値が上がるのでは」と期待する声も増えているが、主催者側は「今回対象だったのはごく一部の限定モデル」と強調。アートトイ市場では希少性が価値を決める鍵だとし、宝石や翡翠とは異なる「感情的な価値」が支持を集めていると分析している。
ラブブの将来についてはさまざまな見方がある。2008年には、現代アーティスト・岳敏君(Yue Minjun)氏とBE@RBRICK(ベアブリック)のコラボが120万元(約2393万7480円)で落札され、当時は「一体のクマがマンション一軒分」と話題になったが、その後はコピー品の流通やIP(知的財産権)の乱立によりバブルが崩壊した。
それでも早早氏は「たとえ同じ道をたどっても、真のファンは残る。ベアブリックと同じく、ラブブにも「アートとトイの中間」という揺るがないポジションがある」と語る。
そして、ここで再び注目されているのが、ハローキティ(Hello Kitty)との比較だ。モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)の調査では、ラブブは2024年5月の検索トレンドでハローキティを上回ったという。サンリオ(Sanrio)の象徴とも言えるハローキティは、半世紀以上にわたって世代を超えて愛され続けてきた。
ラブブは、この「かわいくてちょっと不気味な小さな怪物」として、果たして一過性のブームに終わるのか、それともハローキティのように長く人びとの心に残る存在となるのか。答えはまだわからない。ただひとつ確かなのは、今まさにその分かれ道に立っているということだ。(c)東方新報